セキュリティ

バイナンスがハッキングされ約1兆円が流出、入口はエンジニアのパソコン1台とみられる。日本の利用者は大丈夫? バイナンス公式と警察庁の資料で確かめた【2026年】

公開 ・ 読了の目安 約26分 ・ Sorabun 編集部

バイナンスがハッキングされ約1兆円が流出、入口はエンジニアのパソコン1台とみられる。日本の利用者は大丈夫? バイナンス公式と警察庁の資料で確かめた【2026年】

暗号資産の取引所バイナンス(Binance)は、2026年10月30日の発表で、セキュリティの事案の影響を約63億ドルと見積もりました。円にすると約1兆円です。初期の調査では、入口はエンジニアのノートパソコンとみられています。

日本でバイナンスジャパンを使っている人のお金は、大丈夫なのでしょうか。そして、大きな取引所が、なぜパソコン1台から破られたのでしょうか。

私たちは、バイナンスとバイナンスジャパンの発表を読み、過去に大きく盗まれた2件(2024年の DMM Bitcoin・2025年の Bybit)と、当事者と公的機関の発表で並べて、金額と入口を確かめました。

先に結論を書きます。

まずは、バイナンスの知らせを公式アプリと公式サイトで確かめ、取引所のアカウントにパスキーを設定してください(8章)。

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1. バイナンスの発表:何が起きた?

バイナンスは2026年10月30日、「Security Incident Update」(セキュリティの事案の続報)を出しました。原文は英語です。

バイナンスの発表の要点を6つの枠にまとめたカード。影響の見積もりは約63億ドル(円にすると約1兆円)、入口は初期の調査でエンジニアのパソコン、秘密鍵は流出の証拠が見つからない、止めたお金は約30億ドル、損失は全額カバー、いまは入出金を一時停止。それぞれに英語の原文が添えてある
Binance「Security Incident Update」(2026年10月30日)を Sorabun がまとめた。円は欧州中央銀行の2026年10月29日の参考レート
発表に書かれていること 原文
影響の見積もりは、約63億ドル 「The estimated total impact sits at around $6.3B.」
入口は、DevOps のエンジニアのノートパソコンの可能性(初期の調査) 「may involve a compromised DevOps engineer's laptop」
秘密鍵が漏れた証拠は、見つかっていない 「We have found no evidence of any wallet private key leak.」
約30億ドルを、ブロックチェーンの上で凍結した 「with ~$3 billion frozen on-chain so far.」
損失は、SAFU という基金と会社の資金で、全額カバーする 「Binance will cover all losses from the SAFU fund and the company's funds.」
利用者の資金は、安全 「User funds are safe.」
安全の確認が終わるまで、入金と出金を一時停止した 「temporarily suspended deposits and withdrawals while security checks are completed;」

初期の調査では、DevOps(開発と運用をまとめて受け持つ仕事)のエンジニアのノートパソコンが乗っ取られ、そこから攻撃者が社内のサービスに入り、不正な出金の取引を出した可能性がある、としています。秘密鍵(暗号資産を動かすための鍵)が漏れた証拠は見つかっていません。鍵そのものではなく、エンジニアのパソコンを通じて出金の取引を出された可能性がある、というのが初期の調査の見立てです。詳しい手順は書かれていません。

ほかに、影響を受けたアドレスの権限を取り消したこと、法執行機関やブロックチェーンの分析の協力先と、お金の追跡と取り戻しに取り組んでいることも書かれています。対策が終わったら、準備金の証明(Proof of Reserves)を新しくして公開する、としています。

63億ドルは、円にすると約1兆円

項目 数
影響の見積もり 約63億ドル
ドル円(欧州中央銀行の参考レート、2026年10月29日) 1ドル=158.06円
円にすると 約9,960億円(約1兆円)
すでに凍結したもの 約30億ドル

欧州中央銀行の参考レートは、1ユーロに対するドルと円の値です。その比(1ユーロ=1.1130ドル・175.92円)から、ドル円を出しました。

ただし、これは10月30日の発表の時点の見積もりです。調査は続いていて、数字は変わることがあります。

2. 日本のバイナンスジャパンの利用者は?

日本のバイナンスジャパン(Binance Japan)も、同じ10月30日にお知らせ「Binanceグローバルでのセキュリティ事案に関するお知らせ」を出しました。2026年10月30日未明(日本時間)から、Binance の取引システムでセキュリティの事案が確認された、としています。

バイナンスジャパンのお知らせから3つの文を原文のまま並べたカード。現時点でBinance Japanのお客様資産への影響は確認されておりません。安全確認のため全ての暗号資産の入出庫は一時停止中です(取引そのものは続けられる、とも書いている)。不審なURLや連絡には反応しないようにお願いします。
Binance Japan「Binanceグローバルでのセキュリティ事案に関するお知らせ」(2026年10月30日)
お知らせに書かれていること 原文
お客の資産への影響 「現時点でBinance Japanのお客様資産への影響は確認されておりません。」
取引と入出庫 「現在、Binance取引システム上、取引自体は継続して行えますが、安全確認のため全ての暗号資産の入出庫は一時停止中です。」
お願い 「不審なURLや連絡には反応しないようにお願いします。」
これから 「進捗につきましては、改めてお知らせいたします。」

つまり、10月30日の時点で、バイナンスジャパンのお客の資産への影響は確認されていません。取引はできますが、暗号資産を入れたり出したりすること(入出庫)は止まっています。

10月19日から、パスキーの設定をお願いしていた

バイナンスジャパンは、今回の件の前の2026年10月19日にも、お知らせ「お客様のセキュリティ設定確認のお願い」で、アカウントのセキュリティ設定を確かめるよう、お客に強くお願いしていました。挙げていたのは、次の4つです。

設定 お知らせの説明
二要素認証(2FA) 認証アプリやパスキーによる認証の設定。「特にパスキーの設定をお願いします。」
アンチフィッシングコード バイナンスを装ったフィッシング詐欺のメールを見分けるためのコード
出金アドレスのホワイトリスト 登録したアドレス以外への出金を防ぐ設定
デバイス管理・ログイン通知 不審なログインを早く見つけるための設定

同じお知らせには「当社がお客様に電話やメッセージでパスワード・認証コードの入力を求めることは一切ありません。」「不審な連絡を受けた場合は、リンクをクリックせず、公式サイトからサポートまでご連絡ください。」とも書かれています。

補償や返金、入出庫の再開などをうたうメールやメッセージが届いても、リンクは押さずに、公式アプリと公式サイトで確かめてください(8章)。

3. だれがやった? 分かっていることと、まだ分からないこと

だれがやったのかは、だれが言っているのかを分けて読む必要があります。

件 だれが言っているか 公的機関の発表
2024年 DMM Bitcoin 警察庁が、FBI・DC3(米国国防省サイバー犯罪センター)とともに、TraderTraitor と特定 ある(2024年12月24日)
2025年 Bybit FBI が、北朝鮮によるもので、TraderTraitor と呼ぶ活動と発表 ある(2025年2月26日)
2026年 バイナンス バイナンスは名指ししていない。分析会社(TRM Labs など)が TraderTraitor とみている(分析会社の見立て) まだ無い(2026年10月30日時点)

バイナンスの発表には、攻撃者がだれかは書かれていません。書かれているのは、法執行機関やブロックチェーンの分析の協力先と、お金の追跡と取り戻しに取り組んでいる、ということです(「engaged law enforcement and blockchain intelligence partners to trace and recover funds.」)。

ブロックチェーンの分析会社の TRM Labs などは、北朝鮮を背景とするグループ TraderTraitor(トレイダートレイター)とみています。ただ、これは分析会社の見立てです。警察や FBI などの公的機関が、バイナンスの件をだれがやったと発表したものは、2026年10月30日の時点では、まだありません。

分析会社 TRM Labs の見立て(公的機関の発表ではない)

参考までに、TRM Labs が2026年10月30日の記事(出典の一覧)に書いた数字を挙げます。あくまで分析会社の見立てで、公的機関の発表ではありません。

TRM Labs の見立て 数
盗まれた額(取られた時点の価格) 約63.6億ドル
出ていった先 10のブロックチェーン
出ていった速さ 多くは、約20分のあいだ
凍結された額 約27億ドル(日本時間10月30日の朝の時点)
だれがやったか TraderTraitor の仕業と、強い確信(high confidence)を持ってみている

金額は、バイナンスの発表(影響の見積もり約63億ドル・凍結は約30億ドル)と少し違います。測った時点や値の付け方が同じとは限らないので、この記事の金額は、バイナンスの発表の数字を使います。だれがやったのかも、バイナンスや警察などの発表を待つ必要があります。

TraderTraitor は、どんなグループ?

警察庁の発表では、TraderTraitor は、北朝鮮当局の下部組織とされる Lazarus Group(ラザルスグループ)の一部とされています。手口については「手法の特徴として、同時に同じ会社の複数の従業員に対して実施される、標的型ソーシャルエンジニアリングが挙げられます。」と書かれています。

ソーシャルエンジニアリングは、機械の弱点ではなく、人の心のすきをついて、情報を盗んだりプログラムを動かさせたりする手口です。このグループは、2024年の DMM Bitcoin の件で警察庁が、2025年の Bybit の件で FBI が、それぞれ特定しています。

4. 過去の大きな2件と、金額を並べた

2024年5月 DMM Bitcoin:約482億円(警察庁が特定)

警察庁の発表の冒頭。警察庁は、FBI 及び DC3 とともに、令和6年5月に北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループ TraderTraitor(トレイダートレイター)が、我が国の暗号資産関連事業者の株式会社 DMM Bitcoin から約482億円相当の暗号資産を窃取したことを特定しました、と書かれている
警察庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループTraderTraitorによる暗号資産関連事業者を標的としたサイバー攻撃について」(2024年12月24日)

警察庁は2024年12月24日、捜査と分析の結果、FBI と DC3 とともに、TraderTraitor が2024年5月に DMM Bitcoin から「約482億円相当の暗号資産を窃取したことを特定しました。」と発表しました。

盗まれたのは 4,502.9BTC(攻撃当時 約482億円相当)です。同じ日の FBI・DC3・警察庁の発表(警察庁の仮訳)では、3億800万ドル相当とされています。

2025年2月 Bybit:約15億ドル(FBI が特定)

FBI の PSA の冒頭。North Korea Responsible for $1.5 Billion Bybit Hack の題の下に、北朝鮮が2025年2月21日ごろ、暗号資産の取引所 Bybit から約15億ドルの暗号資産を盗んだことに責任があり、FBI はこの活動を TraderTraitor と呼ぶ、と英語で書かれている
FBI「North Korea Responsible for $1.5 Billion Bybit Hack」(2025年2月26日)

FBI は2025年2月26日の PSA(一般に向けた注意の知らせ)で、北朝鮮が、2025年2月21日ごろに暗号資産の取引所 Bybit から約15億ドルの暗号資産を盗んだとし、「FBI refers to this specific North Korean malicious cyber activity as "TraderTraitor."」と書いています。FBI は、この北朝鮮の悪意あるサイバー活動を TraderTraitor と呼ぶ、という意味です。

Bybit の金額は、発表のドルのまま書きます。いまのレートで円にすると、当時の金額とずれるためです。

金額を、ドルで並べると

3件の金額をドルで並べた横棒グラフ。DMM Bitcoin(2024年5月)3.08億ドル、Bybit(2025年2月)15億ドル、バイナンス(2026年10月)63億ドル。バイナンスは DMM Bitcoin の約20.5倍、Bybit の約4.2倍
警察庁・FBI・バイナンスの発表の金額を Sorabun が並べた(2026年10月30日)
交換業者 時期 金額(発表) 円 だれの発表
DMM Bitcoin 2024年5月 3億800万ドル 約482億円(警察庁の発表) 警察庁・FBI・DC3
Bybit 2025年2月 約15億ドル 円にしない FBI
バイナンス 2026年10月 約63億ドル 約9,960億円(約1兆円。欧州中央銀行の参考レートで換算) バイナンス(見積もり)

発表の金額どうしで割ると、バイナンスは DMM Bitcoin の約20.5倍、Bybit の約4.2倍です。

5. 3件の入口は、どれも1人の従業員・開発者だった

では、3件はどこから入られたのか。当事者と公的機関の発表に書かれた入口を並べました。3件とも、入口は1人の従業員・開発者で、Bybit とバイナンスは、その人のパソコンでした。

大きく盗まれた3件の入口を並べた表。DMM Bitcoin(2024年5月、3.08億ドル)は、従業員に採用前試験を装ったプログラムを送った(ウォレットのソフトの会社)、警察庁が FBI・DC3 とともに特定。Bybit(2025年2月、15億ドル)は、使っていたウォレットの会社の開発者のパソコンが乗っ取られた、FBI が特定。バイナンス(2026年10月、63億ドル)は、エンジニア(DevOps)のノートパソコンが乗っ取られた疑い(初期の調査)、バイナンスは名指ししておらず、分析会社 TRM Labs などは TraderTraitor とみている(公的機関の発表はまだ無い)。それぞれに発表の原文を添えている
警察庁(2024年12月24日)・FBI(2025年2月26日)・Safe(2025年2月28日)・バイナンス(2026年10月30日)の発表を Sorabun が並べた
交換業者 入口(発表の文) 入口になった人
DMM Bitcoin 「採用前試験を装った悪意ある Python スクリプトへの URL を送付しました」(警察庁) ウォレットのソフトの会社の従業員(侵害された)
Bybit 「achieved through a compromised Safe{Wallet} developer machine」(Safe) 使っていたウォレット(Safe{Wallet})の開発者(そのパソコン)
バイナンス 「may involve a compromised DevOps engineer's laptop」(バイナンス。初期の調査) DevOps のエンジニア(そのノートパソコン)

DMM Bitcoin:採用前の試験を装ったプログラムで、従業員が侵害された

警察庁の発表によると、2024年3月下旬、TraderTraitor は SNS で採用担当者になりすまし、ウォレットのソフトの会社の従業員に近づきました。ウォレットを管理するシステムに入れる従業員に、採用前の試験を装ったプログラムへのリンクを送り、その従業員はのちに侵害されました。5月中旬以降、攻撃者はその従業員になりすまして入り込み、5月下旬に、DMM Bitcoin の従業員による正規の取引のリクエストを改ざんしたものと認められる、としています。

Bybit:ウォレットの会社の、開発者のパソコン

Safe の声明の Safe{Wallet} Team Statement on Targeted Attack on Bybit。Lazarus Group による Bybit への標的型攻撃の調べの結果、この攻撃は、乗っ取られた Safe{Wallet} の開発者のマシンを通じて行われ、偽装された悪意ある取引の提案につながった、と英語で書かれている
Safe Ecosystem Foundation「Statement by the Safe Ecosystem Foundation」(2025年2月28日)

Bybit が使っていたウォレットの仕組み Safe{Wallet} の側は、調べた結果を声明に載せています。攻撃は「achieved through a compromised Safe{Wallet} developer machine resulting in the proposal of a disguised malicious transaction」。乗っ取られた開発者のマシン(パソコン)を通じて行われ、見た目を偽った悪意のある取引が出された、という意味です。

同じ声明は「The forensic review of external security researchers did NOT indicate any vulnerabilities in the Safe smart contracts or source code of the frontend and services.」とも書いています。外部のセキュリティの研究者の調べでは、Safe のスマートコントラクトや、画面とサービスのソースコードに、脆弱性は見つからなかった、ということです。仕組みそのものの穴ではなく、人のパソコンが入口でした。

バイナンス:エンジニアのノートパソコン(初期の調査)

1章のとおり、バイナンスは初期の調査で「may involve a compromised DevOps engineer's laptop」としています。乗っ取られた DevOps のエンジニアのノートパソコンが関わっている可能性がある、という意味です。秘密鍵が漏れた証拠は見つかっていません。まだ初期の調査なので、続報で変わることがあります。

金庫ではなく、1人の従業員・開発者から

まとめると、この3件は、取引所の金庫を外から直接こじ開けたのではありませんでした。まず、だれか1人の従業員や開発者に入り込み(Bybit とバイナンスは、その人のパソコン)、そこからお金を動かす取引につなげています。

しかも DMM Bitcoin と Bybit では、入口は取引所の社員ではなく、取引所とつながるウォレットの会社の人でした。大きな会社でも、入口は1人の人だったのです。

6. 警察庁が書いた手口と、すすめる対策

警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター・金融庁は、DMM Bitcoin の件を公表した2024年12月24日に、TraderTraitor の手口の例と対策をまとめた注意喚起を出しています。

手口の例

狙われる人について、注意喚起は「標的となるのは、日本人だけではなく、国内外に居住する、外国人を含む暗号資産関連事業者の従業員です。」「ブロックチェーンや Web3 と呼ばれる技術の技術者も標的となり得ます。」としています。会社のお金だけでなく、「また、個人管理する暗号資産の窃取を狙うことも考えられます。」とも書かれています。

従業員向けの対策

警察庁などの注意喚起の4(2)従業員向け。事前に許可されている場合を除き、私用 PC で機微な業務用システムにアクセスしない。SNS でアプローチを受けた際は、ビデオ通話を要求する(複数回拒否する場合は不審と判断する)。アプローチ元のプロフィールや SNS でのやりとりについて、スクリーンショットを保存する。ソースコードの確認や実行を急がせる兆候があれば、不審性を考慮する。内容を確認せずにコードを実行せず、コードエディタで開いて、折り返し表示にする。コードを実行する際は、業務用 PC を使用しない、または仮想マシンを使用する。
警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター・金融庁「北朝鮮を背景とするサイバー攻撃グループTraderTraitorによるサイバー攻撃について(注意喚起)」(2024年12月24日)4(2)従業員向け
注意喚起の文 つまり
「事前に許可されている場合を除き、私用 PC で機微な業務用システムにアクセスしない。」 大事な仕事のシステムに、私用のパソコンから入らない
「SNS でアプローチを受けた際は、ビデオ通話を要求する。」 SNS で近づかれたら、ビデオ通話を求める。何度も断るなら、怪しいと考える
「アプローチ元のプロフィールや、SNS でのやりとりについて、スクリーンショットを保存する。」 相手のプロフィールとやりとりを、画面の写しで残す
「ソースコードの確認や実行を急がせる兆候があれば、不審性を考慮する。」 コードを見て・動かして、と急がせる相手は怪しい
「内容を確認せずにコードを実行せず、コードエディタで開いて、折り返し表示にする。」 中身を見ずに動かさない。エディタで開き、折り返し表示にして読む
「コードを実行する際は、業務用 PC を使用しない、または仮想マシンを使用する。」 動かすなら、仕事のパソコンを使わないか、仮想マシンで

システムの管理者向けの対策

同じ注意喚起には、システムの管理者向けの対策も並んでいます。サイトを持つ人にも関係が深いものを挙げます。

7. サイトを持つ人にも、同じこと

これは、暗号資産の会社だけの話ではありません。WordPress などのサイトも、管理する人のパソコンが乗っ取られれば、そこから管理画面に入られるおそれがあります。警察庁の注意喚起が書いている、パソコンに保存された認証情報を盗んで本人になりすます流れは、サイトの管理画面にも当てはまります。

大きな会社の守り方(警察庁などの注意喚起) サイトでは
多要素認証を導入する 管理画面に、2段階認証かパスキーを入れる
必要最小限のアクセス範囲と権限を付与する 管理者のアカウントは、必要な人だけに。使っていないアカウントは消す
退職した従業員のアカウントは速やかにロックする 辞めた人や、仕事が終わった制作会社のアカウントを残さない
コードを実行する際は、業務用 PC を使用しない 知らない人に頼まれたプログラムを、サイトの管理に使うパソコンで動かさない

国の機関など9つの注意喚起を数えたときも、ログインを強くすること(多要素認証・パスワード)は、9機関のうち6機関が挙げていました(9機関の注意喚起を全部読んで数えた記事)。大きな会社と、同じ守り方です。

8. 今日やること(5つ)

  1. バイナンスの知らせは、公式アプリと公式サイトで見る。 入出庫の再開などの続報も、そこで確かめます。バイナンスジャパンは「進捗につきましては、改めてお知らせいたします。」としています
  2. 補償や返金をうたう連絡のリンクは、押さない。 メールや SNS のメッセージで届いても、リンクは押さずに、公式アプリで確かめます。バイナンスジャパンも「不審なURLや連絡には反応しないようにお願いします。」としています。電話やメッセージでパスワードや認証コードを求めることは一切ない、とも書いています(2章)
  3. 取引所のアカウントに、パスキーを設定する。 バイナンスジャパンは、2026年10月19日のお知らせで「特にパスキーの設定をお願いします。」としています(2章)。パスキーを保存している Google や Apple のアカウントも、あわせて守ります(パスキーでも証券口座が乗っ取られた?の記事)
  4. 知らない人に頼まれたプログラムを、仕事のパソコンで動かさない。 警察庁などの注意喚起は「コードを実行する際は、業務用 PC を使用しない、または仮想マシンを使用する。」としています。急がせる相手は、怪しいと考えます
  5. サイトの管理画面に、2段階認証を入れる。 管理者のアカウントは必要な人だけに絞り、使っていないものは消します

サイトを持っているなら、URLを入れるだけの無料のセキュリティ診断で、入っているプラグイン・テーマ・WordPress 本体に、既知の脆弱性が無いかも調べられます。

よくある質問

バイナンスに預けているお金は、戻ってきますか?

バイナンスは発表で「Binance will cover all losses from the SAFU fund and the company's funds.」(損失は、SAFU という基金と会社の資金で全額カバーする)、「User funds are safe.」(利用者の資金は安全)としています。ただし、これは10月30日の発表の時点のものです。調査は続いていて、数字や対応が変わることがあります。続報は、公式アプリと公式サイトで確かめてください。

バイナンスジャパンで、いまも取引できますか?

お知らせでは「現在、Binance取引システム上、取引自体は継続して行えますが、安全確認のため全ての暗号資産の入出庫は一時停止中です。」としています。取引はできますが、暗号資産の入金と出金(入出庫)は止まっています。再開は、公式のお知らせで確かめてください。

バイナンスを名乗る電話やメッセージで、パスワードや認証コードを聞かれました。

答えないでください。バイナンスジャパンは10月19日のお知らせで「当社がお客様に電話やメッセージでパスワード・認証コードの入力を求めることは一切ありません。」とし、「不審な連絡を受けた場合は、リンクをクリックせず、公式サイトからサポートまでご連絡ください。」としています。

北朝鮮のグループがやったと、決まったのですか?

バイナンスの件は、決まっていません。バイナンスは攻撃者を名指ししておらず、TraderTraitor とみているのは分析会社(TRM Labs など)の見立てです。公的機関の発表は、2026年10月30日の時点でありません。一方、過去の DMM Bitcoin の件は警察庁が、Bybit の件は FBI が、TraderTraitor によるものと特定しています。

秘密鍵が漏れていないのに、なぜお金が出ていったのですか?

初期の調査では、乗っ取られたエンジニアのノートパソコンから、攻撃者が社内のサービスに入り、不正な出金の取引を出した可能性がある、としています。鍵そのものを盗まなくても、出金の取引を出せるところに入られた、という見立てです。詳しい手順は発表に書かれておらず、この記事でも扱いません。

知らない人に頼まれたプログラムを、動かしてしまったかもしれません。

警察庁などの注意喚起は、パソコンがマルウェアに感染した疑いがあるときは「原則として電源を入れたまま、速やかにインターネットや業務用ネットワークから隔離し、なるべく早く適切な保全措置を行ってください。」としています。電源は切らずにネットワークから外し、仕事のパソコンなら、すぐに会社のシステムの担当者に知らせてください。

暗号資産を持っていない人にも、関係がありますか?

あります。警察庁などの注意喚起は、ブロックチェーンや Web3 の技術者も狙われるとしています。3件とも入口は1人の従業員・開発者だったので、サイトの管理画面や仕事のアカウントも、管理する人のパソコンから、同じ流れで入られるおそれがあります。7章の守り方は、サイトを持つ人にもそのまま使えます。

まとめ

調査は続いています。新しい発表が出たら、この記事を直します。

出典(2026年10月30日に確認)

金額と入口は、当事者と公的機関の発表の本文を、私たちが並べたものです(並べ方は コンテンツ/binance-hack-2026/shots/measure.py)。円は、バイナンスの63億ドルだけを、欧州中央銀行の2026年10月29日の参考レート(1ドル=158.06円)で換算しました。TRM Labs の数字とだれがやったかの見方は、分析会社の見立てで、公的機関の発表ではありません。

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